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第18回岡高フォーラムのご報告
「新薬の研究最前線~いのちに陽をもたらす~」
令和7年1月25日(土)、葵丘にて第18回岡高フォーラムが開催された。初めてのwebも併設したフォーラムであった。今回の講演者は、岐阜薬科大学特任教授の嶋田 薫(高29回卒)氏である。氏は、外資系の製薬会社の主席研究員、同研究所の閉鎖後自分たちで起業した創薬会社の執行役員、名古屋大学非常勤講師などを経て、2021年より岐阜薬科大学に新設された創薬イノベーション共同研究講座の特任教授に就任した、創薬のプロフェッショナルである。講演の中から、興味深い点を拾ってみた。
新車の開発と違って、新薬の開発では、不良部分の部分的改良ということはできないので、創薬には約10年もの時間と数百億円単位の開発費用がかかる。一方で、ドラッグ・リポジショニングといって、既存の治療薬に新たな薬効を見いだす方法もある。他の疾患の治療薬であった「レムデシビル」が新型コロナ感染症に効くことが分かり、コロナの治療薬になったのはその例である。胃薬が癌に効いたり、血圧降下剤が育毛効果を示したりする。一つ薬を見つけると、さまざまに展開できる。最近ではデータベースの充実によりAIで新薬を見つけることもできる。
現在、ペプチド/タンパク医薬、抗体薬、ゲノム創薬、再生医療、細胞治療、遺伝子治療、デジタル治療などニューモダリティと呼ばれるさまざまな創薬や医療が進展中である。欧米と日本とで薬が承認される時間に差(ドラッグラグ、ドラッグロス)があり、日本の課題である。「先進医療」や未承認薬を使用する「治験(臨床試験)」も行われ、それらの検索方法も紹介された。創薬により、多くの人の健康や生命を救う、まさにいのちに陽をもたらすことになる。
(28回卒業生 磯谷正行)